第二話「101」

100というラインが、プロとアマチュアの境界線ならば、99ではアマチュア、101でもプロである。
その差は「2」しかない。
されどプロ、けれどアマチュアである。

俺たちは、少し勘違いをしていたのかもしれない。
肩書き上は「プロ」であっても、101レベルのプロも入れば、
300オーバーのプロもいる。
同じステージに上がっていることに変わりはないが、レベルの高いプロほど、
影の努力は凄まじい。

まあ、すべては、今だから言えること。

分析するならば、こういうことだ。
プロになったことで、より大きな課題がふりかかる。
キャパシティーオーバーになっていることに、気付かずに、毎日が過ぎて行く。
結果、視界が狭くなって、客観的なモノの見方が出来なくなってくる。

2ndアルバムのツアー最終日。
渋谷のライヴハウス2Daysを終え、その打ち上げで、俺はイベンターに言った。
「来年の渋公のスケジュール、押さえておいてくださいね!」
今ではC.C.Lemonホールと呼ばれる、2000人規模のホールでライヴをやることは
正直、楽勝だと思っていたのだ。

バンド側に根拠はなかった。
ただ、世の中のバンドたちが、そうやって成功して行ったから、そう言ったまでだ。
なんとも、蒼い。

しかし、そうでもしないと目標が見えなくて、本当に「音楽」を失ってしまいそうだった。
それを裏付けるかのように、ツアー後、メンバー同士で会うことはなく、連絡もマネージャーを
通じてしか、取り合わなくなった。

俺は、個人行動が多くなった。
定期的なリハーサルの後も、一人で飲みに行くことが増え、そこでのコミュニティを大事にするようになった。
ミュージシャンの先輩、夜の世界の女性たち、異業種の人たち。
やたら刺激的に思えて、その時間が唯一の楽しみになった。
まわりも、プロという肩書きがある俺を、きちんと扱ってくれた。

ミュージシャンの先輩たちとも交流が持てて、なんか自分がそのレベルに上がったかのような気分だったな。
そして、ある日のこと、いつものように、いつものBARに出掛けた時、
顔馴染みの先輩ミュージシャンが、俺に声をかけてくれて、一緒に飲むことになった。
俺は、彼の経験談や、日頃の活動、リハのやり方など、聞きたいことをたくさん聞いて、
彼もいろいろと教えてくれた。
酒も入って、良い気分になってきて、気が緩んだのか、
俺は自分の現在の状況を愚痴ってしまった。

俺は、たった一言で現実に引き戻される。

「泰牙、お前、勘違いしてるんじゃねえの?」

真剣な目だった。
怒りと失望を含んだ目。

「お前はナニサマのつもりだ?一緒にライヴハウスで対バンしてたヤツラは、
今もバイトして、スタジオ代稼いでたりするんだ。
給料貰って、音楽やって、愚痴るとは良い身分だな!」

彼は店を出て行った。
冷や汗が出た。
背中を流れて行くのが、リアルにわかる。

帰るに帰れない。

マスターが先輩のグラスを下げに来て、
「勉強したね」と一言。

午前4時。
部屋まで歩いて帰った。
空が、少しだけ白くなってきた。